夏目録−只今勉強中

小説と紙とインクが好きな物書き。只今あれこれ勉強中につき。

小説家になりたいって思ったら 5(最終回)

作ってみよう!

何をいきなりって。まあ、書いてみようじゃありませんか。

(講座のときはプロットとかメモ書きとか原稿とかをお持ちいただいておりました)

お手元にあるものをまずはみてください。

 

創作をするにあたっては、おおよそ次のような過程を経ていくと思います。

 

思いつき

それをもとに妄想

人によってはプロット作成

原稿書き

推敲

校正

完成

 

皆様のお手元にあるのは、このどこかの段階の作品です。

創作のルールはありませんので、今回は私バージョンで作り方をご紹介しながら、都度気をつけていることを語ってみたいと思います。

 

(注:このときと現在とでは、やり方も少々変わっております。現在のやり方を中心にご紹介しながら進めていこうと思います)

 

思いつき

ネタ出しと言う方がしっくり来る方もいるようです。

ちなみにネタってどうやって引っ張ってきますか? 日々ストックしていたりします?

私は基本的にはネタを集めてうろうろしたりしないので、ネタのストックはありません。ネタ帳も持ってませんでした。何か思いついて、忘れてしまったらそれまで。書くほどのものではなかったのだとあきらめる感じです。

それでも、忘れてしまったことを悔いたことも多かったので、一年くらい前から小さなメモ帳は持ち歩くようになりました。そこに気になったこととか、ネタに限らず本当にメモをする感じで……滅多に小説に使われることは無いのですが、記憶喚起には役立っています。

 

ネタを思いついたら、コレを育てようと決めます。

平行して何作も書くと言うタイプではない……というか、完結させることをモットーにしたら、平行して書くことが辛くなったので、今は基本的には一作(一冊分)ずつ書いています。

ので、決めたネタとは暫くの間つきあわなくてはなりません。

基本的には1ヶ月から3ヶ月を目処にこの一つのネタとつきあう覚悟を決めます。

 

もちろん、多作の方は平行して何本も書かれていますし、その為には同時進行でおつきあいしなくてはならないネタもあるでしょう。

基本的に不器用なので、一対一ですが、まあそこは人それぞれ。

 

とにかく、ネタを思いつきました!

次はコレをこねくり回します。

 

妄想

ここが個人的には一番のポイントだったりします。

どこまで妄想できるかが問題。

私は歩いている時と風呂に入っている時、寝る前が3大妄想ポイントです。特に歩いているときが捗るので、帰宅は電車を使う区間を少なくして歩いてみたりします。歩きながら妄想する。

 

そんな妄想を何度か繰り返し、頭の中で再生される物語がある程度固まってきたら、紙を持ち出します。

どこででも手に入ると言うのが理由で、私はいつでもA4のコピー用紙を使っています。気に入らなかったらすぐに捨てられるしね。

 

最初は横において、ど真ん中に何を書きたいかを書きます。

基本的にはテーマかな。個人的にはテーマの無い小説ってちょっと治まりが悪いので、この話を通して何を書きたいのかをど真ん中に置きます。

 

上手く言えないので、例を挙げていきましょう。

 

 

ネタとしては「薬局」と「妖怪」

テーマは「笑顔」にします。

 

 

紙のど真ん中に「彼の笑顔を最後に見せる」と書きました。

 

 

この作品の分量は4冊分。予定文字数は18万字×4冊で72万字です。

72万字の間、まあ65万字くらいまでは主人公たる「彼」を笑わせることが出来ないと言う縛りが出来ました。

 

そのワードの周囲に、キーワードをちりばめます。妄想は終わっておりますから、必要なキーワードは結構なスピードで出てきます。

 

薬局、妖怪、叔父、友人、大学、浪人、両親、事故、妹、狐、銭湯、幽霊、祖父、カナメ、寺、廃屋、子育て幽霊、このはなさくや、女医、家鳴、マンション、グレイ、

 

何がなんだかわからない状態ですが、私にはもちろんわかっています。登場人物とか、必要なものを一気に単語だけ出している状態です。

 

あらかた出て来たら、ペンの色を変えます。何色でも良いけど。

個人的には最初のは黒、次は青ってのが多いです。

 

 

最初のワードのそばに、名前とか関係とかをありったけ書き込みます。みっしり。びっしり。ぐちゃぐちゃでも構わないからひたすら書き込みます。

 

次にもう一回色を変えます。

お分かりでしょう、私の場合は赤。

そこから必要な、最低限必要な情報にマーキングをします。

 

 

この作業をするようになったのは、ただ一つ。

某作家さんが恩師から言われた

 

 

10を知って10を語るのは、大変卑しいことだ

 

 

という言葉が印象的だったからです。

作った設定の全てを詰め込むのは、大変卑しい。そう勝手に捉えまして、丁寧に丁寧に作り込んだ設定のうち、物語に必要なものをチョイスすることにしたのです。このチョイスは後々大変役に立ちました。

 

 

舞台裏はしっちゃかめっちゃかですが、彼らの配役と最低限のデータは出そろいました。私はコレを設定シートと呼んでいます。

書き直すことはまずありませんが、足りなくなって紙面を拡張することはあります。

 

ちなみに世界設定がある場合。ファンタジーとかSFとか。

この場合、世界設定も別のシートを用意しています。

ファンタジーならざっくりとした位置関係に基づき、どんな国があるとか、どんな作物が取れるとかを。これをやっておくと、登場人物が移動をしたり、どこかから作物が届いたり、うみを越えるときの気候とかの設定にムリが無くなります。便利!

先に世界シートが出来る場合(でかいファンタジー)の場合には、最初に作る設定シートも、何となくその国の配置に乗っ取って、登場人物たちも配置されることになったりします。仮に紙が透明だったら、重ねたら面白いことになりそうな、そんなイメージです。

 

ここまでいくと妄想は終了。

さて、お話を作る設計図を作りましょう。

 

プロットを作ろう

私がプロットと呼んでいるのはここからです。設定シートとは別の、物語の設計図。

今回は4冊分を作るので、4冊に何を書くのかを割り付けたいと思います。

 

これは書いても良いし書かなくても良いとは思いますが、文字を書くのが好きなので結局書いてます(笑)

 

1巻「薬局の当主を引き継ぐ。人でなければ経営できない薬局は、ここ20年くらいは叔父(仮)正体は狐がやってた。そのため叔父の本体は腐り果てている(隠してる)。最初は嫌がっていたが、薬局を引き継ぐ」

 

2巻「新米当主。不安定ながらもなんとか走り出す。だが、幽霊の子供を拾って来てしまって、家の狐と大げんか。狐家出をする。主人公は謝り方がわからない。とたんに薬局がぼろぼろに。まだ彼の力に頼っているのだと気付かされ、そのため彼がまだ病んでいることにも気付く」

 

3巻「会合にさんかする。かつての当主と比べられてイライラする。ちなみに主人公は受験生。イライラマックスとなり、ちょっと孤立する。和解してギリギリの形で受験。みなハラハラする」

 

4巻「狐に限界がくる。それを隠していたことに怒り、この時、彼が何かを忘れていることに気がつく。それは、かつて祖父と交わした約束。彼はずっとそのまじないの為にこの家に縛り付けられていた。まじないを解くことは別れを意味するのか。主人公はそれでもまじないを解く。そして、狐は自分の意志で戻ってくる。「おかえり」(笑う)」

 

伏線の予定を立てよう

こうすると、4巻に伏線回収をしたいポイントが出て来ているのがわかります。

記憶って何よってヤツです。

ってことは、この記憶にまつわる何かを1巻から入れておかなくてはなりません。

祖父との約束ってヤツですね。コレを1巻に入れましょう。

あとは「おかえり」で笑うので、ここまでずっと「おかえり」と言って微笑まれる側にいたいですね。うん。同居している狐はずっと「おかえり」と言って笑わせましょう。どんなときも、いつだって。

 

2巻にもポイントがあります

「主人公大げんか、謝り方がわからない」

これね。謝り方がわからなくて困るシーンを、ここよりも前に入れたい。でも謝らずにスルーできちゃってほっと胸を撫で下ろす的なやつ。

 

そしてテーマ。

笑わせる。と言うことは作品を通して彼は笑いません。

ちなみに自分では笑っているつもりですので、彼の不気味な笑みと言えない表情を見た周りの連中の反応を書いておく必要があります。

「残念だ」

「彼が自分で気付かないと」

「その顔……いや、べつにいいけど」

みたいな、あからさまなヤツから。笑いかけたつもりが、向こうが引きつった表情になるとか、友人が少ないとかの黙示のやつまで。

 

こうしていくと何となく方向性が決まります。

 

 

 設計図(プロット)をつくろう

それじゃ紙に向かいましょう。

1冊分を割り付けます。

1巻を例にとれば

 

フェーズ1(プロローグ)

薬局への引っ越しを打診される

嫌々ながら引っ越す

 

フェーズ2

変な薬局

おかしな住人(狐本体明かす)

妖怪登場

現実を受け入れられないよ!

 

フェーズ3

あきらめ

とりあえず日常・友人登場

近所で起きるペット殺し

同居人の服に血が

夜中の咆哮(本性垣間見える)匂い

 

フェーズ4

疑い

真夜中の同居人(本性バレる)

同居人に襲われる。(喰われかける)

街では人が死ぬ。

更なる疑い・心配

対決?

 

フェーズ5

どちらを信じる

この目を知ってる。

真相

退治

歌わせる

店主交代

 

フェーズ6(エピローグ)

子供の頃には

いつかきっと

 

 

何がなんだかわからないでしょう……ね。すみません。

1巻で必要なものを単語だけで入れてみた感じです。これをもう細かく詰めるので……。

何となくこんな感じだなってものを書き出します。

メモねメモ。これをガイドにプロットを立てるのです。

 

私は面倒なので、これもざっくりとスペースを取って2、3枚の紙に縦に並べてしまいます。ここでも基本は黒ペンです。単語が多くても構わないと思います。キーワードだし。

 

タイトルを決めよう

この辺りで流石にタイトルを決めます。

最初から決まっているときは、もう、問題は無いのですけど!

 

タイトルは結構悩みます。タイトル先行で決まるときは、話も最初から形があることが多いです。「誰にも会ってはいけない」なんてのはその典型でした。

実はあれ、最初はプロットもなんにも無くて、タイトルだけがぽこっと浮かんだ作品なんです。

 

家の近所に、ちょっと奥まったところに扉のある家があるんですが

 

「こんなところから、夜中に人が出て来たら……」

 

「そんな人には会っちゃいけない気がするよね」

 

「スニークスキル発動だね」

 

そんな脳内会議をしながら家に帰っているときに「誰にも会ってはいけない」という指令が降りたのです。

何も決めていなかったのですが、書き始めたらあっという間に形は出来上がりました。

タイトルってそれだけで、ものすごい光量でゴールを照らすライトのような力を持っています。

 

 でも、そんなタイトルが降りてこないときもある。

悩んで、悩んで決めるときもある。

そんな時、強い味方になるのがプロットだと思います。キーワード出してますからね。

キーワードを絡めましょう。

 

今回は「薬局」と「歌う」を選びました。そして四冊なので季節。

薬局の名前は「鈴弦堂(れいげんどう)」といいます。季節は大好きな「夏」から始めることにしました。そして「歌」。実はこの薬局、代替わりのときに看板についている鈴が大きく鳴ると言う特徴があります。なので、歌うのは鈴弦堂そのもの。

夏の歌と鈴弦堂……うーん。

夏に歌う鈴弦堂……うーん。微妙。

鈴弦堂と夏の歌……ありか?ありなのか?

歌う鈴弦堂と僕の夏……なんかなあ

鈴弦堂に夏の歌……ん?んん?語感は良いぞ。とりあえずこれにしておくか

 

 

よし、タイトルは「鈴弦堂に夏の歌(仮)」です。

今考えるとインパクトが無いな。微妙だなあ……

まあ、そんなときもある(笑)

 

 

 

友人たちにも聞いてみました。タイトルはどうやってつけるのか。

 

漫画家「あまり気にしてない。それよりインパクトのある表紙を描く」

たしかに。そんな戦い方がありましたね。すみませんでした。

 

小説家「何個も案を出して、編集さんと一緒に決める」

わかる。すっごく良くわかる。私もこのタイプです。一発オーケーの時も稀にありますし、弄くり回して最初のになることもありますが、そうやって決めたヤツは悪くない感じに収まっています。

 

小説家「フィーリング。一度決めたら基本的に変えない。タイトルで内容も語る」

長いタイトル系の方です。結構最初の段階で決めるそうで、そのままぶれずに書き上げるっていってました。化物かな。

 

エッセイスト「耳に残る音にする。ターゲーットを絞って、その人たちの気になるワードを入れる」

視点が違う!私たちよりも売り幅の狭いエッセイストさんは、マーケティングが強いとは聞きますが……流石です。

 

漫画家「一息」

ん? どういうこと?

釈明を求めましたら「一息で言えるものにしてる」と言われました。「○○の○○」では無く「××××!」みたいな感じらしいです。なんでだろうと思っていたら、略されるのが嫌で、最初から略語みたいなタイトルをつけるんだそう。へえー。

 

小説家「プレイ名、属性、語感。とりあえず耳を犯す」

何言ってんだお前……って、BL作家さんです。ソフトにもハードにも、だそうで。

女子のポイントは脱衣と着衣両方に在るので、脱衣バージョンと着衣バージョンでタイトルも使い分けるそうです。難しいな。

女性向けの大人な小説も書かれる方です。BLでは一大市場をもつ「もふもふ」の反応が悪いって言ってました。あと「巨乳」もアカンかったと昔酒を飲んだときに愚痴ってました。こっちも奥深いな。

 

小説家「プレイ名、属性、語感。下半身をターゲットにする」

これね、ラインで聞いたのが間違いでした。上の方の直後にかえってきたから、多分ネタだよね。ちなみに官能小説家さん。「あやまち」「秘」って入れると売り上げが伸びるそうです(笑)

 

結論なんて出ませんでしたが、担当編集の方に提示して「どう?」って聞くのはみんなやるそうです。そりゃ最初の読者さんで、売ってくださる方ですから。いわば社会の窓(笑)

 

創作は独りよがりになりがちですからね。

出来ればたくさんの方に見てもらって、意見を聞いて、タイトルも決めてあげると良いかと思います。

適当なタイトルで呼んでて、耳慣れちゃってそのままってことも無いわけじゃないよ……うん。

 

プロットを仕上げよう

ざっくりワードの隙間を埋めていきます。

 

 

フェーズ1(プロローグ)

薬局への引っ越しを打診される

予備校から帰って来たら、叔父が死んだと聞かされる。

遺産に古い薬局がある。

住んでくれないかと言われる。どうやら、管理してほしいとの遺言あり

居候なので(両親は他界)文句は言えず

嫌々ながら引っ越す

 

フェーズ2

変な薬局

下町。活気あふれる商店街。駅から歩いて10分くらいの場所

訪ねてみるが誰もいない。そこへセールスマン登場

ニヤニヤ笑いながら取引の継続を願い出る。

書類があるかもと、鍵をあけて。

セールスマンに「中へどうぞ」という

にたりと笑ってセールスマンはいる(おはいり、と言われないと入れない

襲いかかってくる

おかしな住人(狐本体明かす)

助けてくれたのは、中学生くらいの男の子

この家の住人だという。叔父の子供か?

同居はごめんだと、家に帰ろうとするがひきとめられる。

男の子は、叔父の子ではなく叔父だという。

大人の姿で居られなくなったので、死んだことにしたらしい。

説明の意味がわからない。

でも、男の子は尻尾を出す。「お前、本数が多くないか」

「九本です。いいでしょ?」

妖怪登場

家の中は妖怪だらけ……らしい。見えないので何ともいえない。

ただ、勝手に開く障子、おかしな笑い声

もうかえりたいと本気で思うが、そんなときに電話。

お願いと言われたら断れずに「大丈夫です」といってしまう。

そして「疲れた」のひとことで、少年が寝床を用意する。

彼の名前は「要」

ちょっと引っかかる。そしてこの日、夢を見る。

全てただの夢かもしれないとおもったけど、あさ居間にいくと要がいる

現実を受け入れられないよ!

 

こんな感じかな。

 貼った伏線は赤、回収は黄色で書いてます。管理もそんな感じです。赤線で伏線部分をチェックして、黄色マーカーで回収を確認しています。わざと回収しないときも在りますが……

 

とうとう書きます 

この部分に語ることがほとんどない……。

ひたすら書きます。誤字脱字もとりあえずスルーで、後述の推敲作業に回す

言い回し

語尾

単語の用法

等もスルー。ひたすら書きます。

書いているときにやるのは、伏線を貼ったところにマーカーを入れることくらいです。

あとはもうひたすら。

 

私はWordを使っていますが、エディタを導入している方が多いかもしれません。

Word、重いんですって。

私、20万字を一つのファイルにしているので、立ち上がりが確かに遅い。

そんなもんかと思っておりましたが、エディタか。気になる。

ポメラユーザーも多いかもしれませんが、私の周りにはあまりいませんでした。これも気にはなる。

 

縦書き、明朝、40×40で書いてます。

ちなみにMac。キーボードの押し心地が気に入り。

 

推敲しよう

小説家の技巧って、多分ここに集約されていると思います。

 

リズムのチェック……韻のようなもの

無駄を省く作業(文字数には限りがあるので)

ちゃんと情景描写が出来ているかのチェック

 

リズム

私は、一文を一気に語る癖があります。「、」が少なかったり多かったり。バランスが悪いのです。なので、ここで出来るだけ頑張って直します。

ぶつ切りよりは長めが好き。

 

……た。

……た。

……た。

 

って言うのを回避したり。チャンスを見つけたら韻を踏んでみたりします。

この辺りは皆さんもきっとやってらっしゃるはず。そういう原稿が多い気がします。

 

 

無駄を省く

俳句の感覚に近いですかね。

章の区切りや、ページ数、連載の時など、そのときどきで文字数に縛りがあったりします。縛りがなくても、無駄はないほうがいい。素敵な装飾は残して、無駄は省いていくのが好きです。

 

例えば

空の雲が……

雲は空にあるのが普通です。「空の」は省けます。雲が「薄く」というような描写に切り替えたりします。

 

なだらかな曲線を描く……

このあとに何が来るかにもよりますが、例えば「乳房」ならばこの描写は個人的にはアリです。柔らかさの強調みたいな気持ち。

このあとにくるのが「地球儀」「ボール」とかだと、要らないかな。

なだらかな曲線を描かない地球儀。恐ろしいです。その地球恐ろしいです。ボールも勝手にカーブを描くね。誰でも魔球ボールだね。

んじゃ「丘」……ううむ。まあ、アリかなあ。

 

 

この描写の無駄省き。

結構使えるんですよ。

 

例えば

 

彼は急いで鞄を背負った。

 

ほら、これでもう彼が持ってる鞄はリュックか、まあそういう感じのものになりました。

 

彼は急いで鞄を持った。

 

ビジネスバックかもしれない。これは判別が難しい。

 

彼は急いで鞄を肩にかけた。

 

ショルダーかな、トートかな。

 

俳句をやると、文字数に縛られる結果として日本語に敏感になると言いますが……やってみようかな、俳句。てにおはも素敵に使えるようになりたいよ。

 

そんな感じで私は要らない部分を省いて、その代わりに描写を入れるように心がけています。

 

情景描写

前にもちょこっと言いましたが、私、昔は漫画を書いていました。もちろんただの趣味ですよ。

そんな私の漫画には、背景が在りませんでした。

描けなかったんだよね。四角い豆腐とかを量産して「ビル」って書くとか、そんなレベル。

小説で言うところの

 

 

ここはビル街だ。

 

 

の一言がこれにあたります。

何度も言うようですが、これでも全然オッケーです。

どんなビルが並んでいようが、それを描くか描かないかは作者さん次第。

ですが、一つだけ描かなくてはならないときが在ります。

 

 

時代物

 

 

これね。描かないと全く雰囲気が出ません。不思議だよね。

どんな装飾のビルなのか、どんな看板がかかっているのか、何色なのか、素材は。内装は、家具は。

ほんの少しでも良いから書かないと、とたんにおかしな雰囲気になるのです。

 

武士が部屋に居るとしましょう。

ちょっと暗くなってきたので光源が欲しい。

 

「おい、灯りを」

へえ。只今

 障子を開けることも無くそう言えば、階下から店主の声が届いた。この指南書を手渡されてから、軽く四半時は経っている。外も暗くなるというものだ。木戸も閉まっただろうか。

「ずいぶんとご執心だな」

 吉佐がつるりと額を撫でてから、揶揄の色を隠さずに口元を歪める。いつものことだ、取り合っていては時間がいくらあっても足りなくなる。

「言ってろ。お前こそ、帰らんで良いのか」

 問うてみれば吉佐はとたんに苦虫を噛み潰したような顔をして、明後日の方みた。

 ははあ。これはどうやら妻君とまた一揉めあったなと、俺は鼻を鳴らしてやった。

うるせえ顔だな。ただの糞詰まりだよ」

「そうかい」

 部屋へ入って来た店の主人は、俺たちの会話は聞こえているだろうに、こちらにはちらりとも目もくれず、短い蝋燭をつけ、慇懃に頭を下げて出て行く。

 

 

少々軽目ではありますが、時代物を書くときには描写も少し変わります。

そして使う文言が変わります。共通して使っちゃうこともありますが、それなりにそれなりの言葉を選びたくなる。

この場面では「障子」「蝋燭」「木戸」を造作として出しました。和室で、古くて、多分江戸。街区を仕切る木戸は夜になると締まる。それを前提として描写すれば江戸っぽい。

入れ込んでるのは「二階建て」であること、「二人があまり金を持っていないこと」も書いてます。

良い客は金払いの良い客。長居上等。

でも店主がつけたのは短い蝋燭です。そして礼を慇懃とすれば、いわんとするのは「はよ帰れ」でしょうね。だから多分灯りもつけに来なかった。

 

こんな感じで書き入れたり省いたり、時代に合わせて調整したりしています。

読み手として背景がある方が好きな私は、どうしても背景描写を入れたくなります。かといってこんなビル、あんな建物を延々と説明するのは……前述の通り「メモに過ぎない」ことになりますので、上手いこと人の描写に絡めて、カメラに収めていく感じです。

 

 

誤字脱字とかのチェックをして終了!校正とかはもう新しい目で見るもんね!

と言う感じなのですが。

私、誤字脱字多いんです。誤用も多い。そして何より、国語能力が……多分あまり高くない。比べたこと無いけど、成績とかもあんまり。担当編集さんがむちゃくちゃ頑張ってくれます。ごめんなさい。本当にゴメンナサイ。

 

さいごに

長々と語ってきましたが、魅力的なキャラクターの作り方、とか、ストーリーは起承転結とかはきっともう皆さんの中にあるものだと思っています。

それを皆さんの想像通りというか、想定通りというか、理想に近い形で外へ出すお手伝いをさせて頂けたらな……と思って、今回の講座の内容を考えました。

私は物語が大好きです。

きっとまだ発表されていない物語の中に、私が生涯をかけて愛し続けるものがあるのだと、そう思っています。それは今、まさに、あなたが生み出そうとしているのかもしれない。

一読者として、そのものがたりに出会える日を心待ちにしております。

ぜひ、小説を書いてください。

私たち読者が待っています。

 

そして本当に最後になりますが、発表をするということは、たくさんの声が届くということにも繋がります。

きっとマイナスの声もあるでしょう。

でも一つのマイナスの後ろには、その何倍もの沈黙のプラスがあることを忘れないでください。マイナスは声に出しやすい。プラスはそっと背中を押す。そんな図式が存在することだけは頭に置いて頂きたいのです。

マイナスの声にばかり耳を傾け、筆を折る人も見てきました。自分も物語も曲げる人も見てきました。意見を取り入れることは大切です。ですが、一つのマイナスの為に、たくさんのプラスを踏みにじることもしたくない。私はそう思っています。

 

ここでも恩師の言葉を引用させて頂きます。

 

心を折ってはいけません。きっといつか、あなたの作品を心から好きだっていってくれる人が表れるから。たった一人でもそんな人がいたら、それ以上嬉しいことは無いでしょう。

 

論文を書いているときに、ダメだしばかりでへろへろしていたときに言われました。

私の根幹はこの辺りにあります。きっと私の作品を好きだと言ってくれるたくさんの一人の為に、お尻が平になっても文字を綴ると誓います。

 

さあ、皆さんも一緒にお尻を平にいたしましょう!